伊根町その2 3つの海景

前回の続き、というか番外編

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上の航空写真は今回訪れた伊根町を写したもの。舟屋は湾を囲むように並んでおり、それぞれの住居が海とまっすぐ向かい合うために家と家の間には角度をもった隙間が生じる。そしてその隙間からもわずかに海が覗く。

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舟屋内部から見る海と隙間からのぞく海とは有意識と無意識の対比を成す。つまり「向き合おう」という意思から作られたものと偶然、というか結果的に見えてしまったものとに分けて考えることが出来る。

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それを示すように屋内は船や釣り具、工具などの海に向かうための道具が、屋外には自転車やゴミ箱などの海と関連の無い、どちらかといえば裏のものが置かれていることが多かった。

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表としての海と裏としての海が交互に連続して、かつ海の見え方(視点の絞り方)も次々に変化してゆく。この家と家の隙間というのは直行グリッドを基にしている京都市ではあまり見られないため、非常に興味深く思えた。

 

中央の湾を考えてみるとそこは漁に出る場で、また帰ってくる場でもある。漁師が家と向き合うタイミングというのは行く時ではなく帰ってくる時で、ベランダに干された洗濯物や窓からのぞく居間の様子など、家であるという象徴が湾から見えることでオンとオフを切り替える。その瞬間に仕事が終わり、家へと帰るのではないだろうか。そのために海に面しているのは、生活ののぞく裏でなければならないのだろう。観光客が海越しに、伊根町のイメージとして捉えるのは住民の裏であり、裏から作られる街並がこの町を特徴づけているのではないだろうか。